私の弟(奈良久司/茶名 宗久)は裏千家業躰部に所属させて頂いている。
「業躰」とは家元のもとで修行を積みながら、その直伝を正確に弟子に伝えていく仕事である。
時には家元に随行し、時には講師となり、国内外を問わず今日庵(裏千家)より派遣される。
御家元の命によって、弟はその仕事を務めさせて頂きながら、金沢や東京などで自ら社中をもち教える機会を頂いている。
金沢の彼の道場は由緒がある。半世紀ぐらい前だろうか、祖父(九代長左衛門)は、ある人から購入を頼まれた家があり、
隠居後にはそこで過ごした。10年ほど前、数寄者であり郷土史家であった本岡三郎氏が、その近辺の江戸期の地図を発見した。
それによると仙叟(裏千家始祖/前田5代藩主に茶道奉行として金沢に招かれ後に裏千家を興す)屋敷がはっきりと示されており、
祖父の住んだ所は仙叟屋敷跡地だったのだ。
「仙叟」そして「裏千家」の恩恵で「大樋焼」という歴史を考えた時、偶然とはいえ、この奇遇に感謝せずにはいられない。
今、玄関には裏千家より「仙叟屋敷跡地」という石碑、金沢市より「金沢での前田家と仙叟の関わり」が解説された銅板が建立されており、
裏千家鵬雲斎大宗匠が直に設計された「好古庵」という茶室ともに弟はそこで居を構え、
裏千家直伝の茶道を教えさせて頂きながら多くの社中の方々に支えられている。
例年恒例の稽古初め、東京での社中の方々も交えての招待客が濃茶、薄茶と嗜み、夜はホテル日航金沢に於いて盛大に祝宴が催された。
社中には多彩な人材がいて、プロの放送局のキャスターが司会を務め、弟の挨拶(例年上手くなっていく)、父(十代長左衛門)の挨拶、
社中を代表して佐藤 ホテル日航金沢総支配人が乾杯、新しく入門された方々の紹介、抽選会、私が御礼を述べさせて頂き、
辻亮一 裏千家石川支部副支部長の御挨拶、出席者皆様のお陰で賑やかな会となった。